働き方・労務2026-08-18監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

警備員の労働時間と休憩・仮眠は実際どうか|断続的労働の仕組みと注意点

この記事の要点

「仮眠時間って、結局は働いてることになるんですか?それとも休みってことになるんですか?」

施設警備の面接に同席していると、この質問はほぼ毎回出てきます。24時間隔日勤務という独特な働き方を持つ施設警備の世界では、仮眠時間の扱いが給与にも体力にも直結するからです。結論から言うと、仮眠時間が労働時間になるかどうかは「その事業場が断続的労働の許可を得ているか」「仮眠中に実質的な対応義務があるか」の2点で変わってきます。曖昧なまま入社すると、思っていたより手取りが少なかったり、逆に休めると思っていた時間に何度も呼び出されて疲弊したりします。実際、僕が相談を受けた20代の警備員は、面接時に「仮眠は8時間しっかり取れます」と説明されて入社したものの、実際には深夜の巡回対応や警報対応が月に十数回発生し、仮眠が実質2時間程度しか取れない現場に配属されたことがありました。求人票の文言だけでは見抜けない部分が、この仮眠時間の扱いには潜んでいます。今日は、この仕組みを僕なりに整理してお伝えします。

1. 施設警備の勤務形態、まず全体像を整理する

施設警備の勤務形態は、大きく分けると日勤専属、夜勤専属、そして24時間隔日勤務の3パターンです。日勤・夜勤は一般的な8時間労働に近い形なので、労働時間の考え方は他の仕事とそう変わりません。特殊なのは24時間隔日勤務で、朝から翌朝まで拘束され、その中に休憩・仮眠時間が組み込まれる働き方です。オフィスビルや商業施設、病院などの常駐警備で採用されることが多く、「1日勤務して1日休む」というリズムから、まとまった休みを取りやすいというメリットがある一方、拘束時間の長さそのものが独特の負荷になります。僕がこれまで見てきた現場では、テナントビルの警備で日勤帯は来客対応や搬入管理に追われ、夜間になると巡回と機械警備の監視が中心になる、という緩急のある一日を過ごすケースが多い印象です。この24時間隔日勤務を理解する上で避けて通れないのが、次に説明する「断続的労働」という制度です。

2. 「断続的労働」とは何か|労基法41条3号の許可制度

労働基準法41条3号には、「監視又は断続的労働に従事する者」について、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合は労働時間・休憩・休日に関する規定の適用を除外できるという定めがあります。施設警備の多くはこの許可を取得しており、これによって拘束24時間という勤務形態が制度上成立しています。断続的労働というのは、常に緊張して作業し続けるわけではなく、実作業と手待ち時間が交互に発生する業務のことを指します。警備業はまさにこれに当てはまるとされ、拘束時間の中に仮眠や休憩をあらかじめ組み込むことが認められているわけです。ただし、この許可はあくまで「事業場ごと」に取得するものであり、会社全体が一律に許可を得ているとは限りません。同じ警備会社でも、Aビルの現場は許可を得ているのにBビルの現場は許可を取っていない、というケースも実際にあります。現場によって許可の有無が違う、ということは覚えておいて損はないと思います。

3. 仮眠時間は労働時間か、休憩か|大星ビル管理事件が示したもの

断続的労働の許可があるからといって、仮眠時間が自動的に「完全な休み」になるわけではありません。ここで重要になるのが、最高裁平成14年2月28日判決(大星ビル管理事件)です。この判決では、ビル管理業務における仮眠時間について、仮眠室での待機や警報対応の義務が課されている場合、その仮眠時間は実質的に使用者の指揮命令下にあると評価され、労働時間に該当すると判断されました。つまり「仮眠時間」という名前がついていても、実際に警報が鳴れば対応しなければならない、来客があれば出て行かなければならない、という拘束が残っている限り、それは休憩とは呼べないという考え方です。逆に言えば、仮眠中は完全にオフで対応義務がない、という設計になっている現場であれば、その時間は休憩・仮眠として賃金対象外にできる、という整理になります。この線引きは会社によってかなり運用差があるというのが、僕が現場の話を聞いてきた中での実感です。ある現場では仮眠時間中でも警報対応が月に数回発生しており、その分の実働をきちんと時間外として申告・支給している会社もあれば、仮眠時間はまるごと無給扱いにしたまま対応だけさせている会社もあります。後者は法的にはグレーどころか黒に近いケースもあるので、注意が必要です。

4. 24時間隔日勤務、実際の一日はこう流れる

具体的なイメージが湧きにくいと思うので、僕が聞いてきた典型的なタイムスケジュールを、目安値として表にまとめました。

時間帯内容位置づけ
8:00〜18:00受付・巡回・搬入管理などの実作業労働時間
18:00〜24:00巡回・機械警備の監視労働時間
0:00〜5:00交代制の仮眠(2〜3時間程度)現場・会社により労働時間/休憩が分かれる
5:00〜8:00巡回・開館準備労働時間

この中で「休憩」として位置づけられる時間が合計6〜8時間程度、実働として扱われる時間が16〜18時間程度というのが、僕が見てきた現場のおおよその配分です。ただしこれは現場や会社によって幅があり、警戒レベルの高い現場では仮眠時間そのものが短く設定されていることもあります。

5. 給与への影響|仮眠時間の賃金、日給月給制の仕組み

施設警備の給与体系は日給月給制が多く、1回の勤務(24時間拘束)に対して日給が支払われる形になります。この日給の中に、仮眠・休憩時間の扱いがどう反映されているかは会社によって差があります。僕がこれまで見聞きしてきた運用は、大きく3つのパターンに分かれると感じています。

パターン特徴リスク
①許可あり・対応義務なし仮眠時間は完全休憩扱いで無給。呼び出しは原則発生しない設計低い(制度上は妥当)
②許可あり・対応義務あり仮眠時間中も警報対応等が発生するが、その分は時間外として別途支給低〜中(運用が適正なら問題なし)
③許可あり・対応義務ありなのに無給扱い仮眠時間中の対応が発生しているのに、仮眠時間はまるごと無給のまま高い(大星ビル管理事件の考え方に照らすと問題含み)

求人票に「日給1万2000円、拘束24時間、実働16時間」と書かれていたとして、その日給が実働16時間分の時給換算なのか、拘束24時間全体を踏まえた金額なのかは、実は求人票だけでは判別しづらいことが多いです。僕の体感値で言うと、日給を実働時間数で割ってみて、地域の最低賃金を大きく下回っていないかを確認するのが、給与面で失敗しないための最初のチェックポイントだと思います。明らかに低い場合は、③のパターンに近い運用になっている可能性を疑ってよいと思います。

6. 求人票・面接で確認すべきチェックポイントと、よくある失敗

ここまでの話を踏まえると、入社前に確認すべき項目は自然と絞られてきます。一つ目は、その事業場が断続的労働の許可を得ているかどうかです。面接で「うちは断続的労働の許可を取っています」と明確に答えられる会社は、労務管理の意識が比較的しっかりしていると考えて良いと思います。二つ目は、仮眠時間中に対応義務があるかどうか、そしてその対応が発生した場合に別途賃金が支払われる仕組みがあるかどうかです。三つ目は、休憩・仮眠の取得実績を記録する仕組み(休憩記録簿など)があるかどうかです。記録の仕組みがある会社は、後から「休憩を取れていなかった」というトラブルになった際にも、事実確認がしやすくなります。

実際に確認する手順としては、まず求人票を読んで拘束時間・実働時間・休憩時間の内訳をメモするところから始めます(5分程度)。次に面接で先ほどの3つの質問を投げかけ、回答の具体性を確認します(10分程度)。最後に、可能であれば内定後に雇用契約書・就業規則の該当条文を見せてもらい、仮眠時間の扱いが口頭説明と一致しているかを照合します(15分程度)。この3ステップを踏むだけで、入社後のギャップはかなり減らせるというのが僕の実感です。

よくある失敗として多いのは、面接での口頭説明だけを信じて契約書を確認せずに入社してしまうケースです。冒頭で紹介した20代の警備員も、面接では「仮眠8時間」と聞いていたものの、雇用契約書には仮眠時間の対応義務に関する記載がなく、結果的に口頭説明と実態が食い違っていました。この場合の対処法は、入社後であっても雇用契約書・就業規則の写しを請求し、実際の勤務記録(休憩取得実績)と照らし合わせることです。食い違いが続くようであれば、労働基準監督署への相談や、転職エージェントを介した交渉も選択肢になります。逆に言えば、契約書と実態が一致している会社は、多少仮眠時間が短くても、労務管理の透明性という点では信頼しやすいと僕は考えています。

0.(結論)

施設警備の仮眠時間は、「仮眠だから完全に休み」でも「拘束時間だから全部労働」でもなく、断続的労働の許可の有無と、実際の対応義務の有無によって扱いが変わる、というのがこの記事の結論です。求人票の「休憩8時間」という表記だけを見て安心するのではなく、その休憩がどう定義され、どう賃金に反映されているのかまで、面接と契約書の両方で確認する姿勢が、入社後のミスマッチを防ぐ一番の近道だと僕は考えています。仮眠時間は、いわば信号待ちのようなものです。止まっているように見えても、いつ動き出すか分からない緊張感が残っている限り、それは完全な休みとは呼べません。皆さんいかがでしたでしょうか。まずは自分の現場、あるいはこれから受ける求人が、この仕組みをどう運用しているかを確認するところから始めてみてください。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 警備員の仮眠時間は給料が出ますか?

断続的労働の許可を得た事業場では、原則として仮眠時間は労働時間に算入されず賃金の対象外になるケースが多いです。ただし警報対応など実質的な待機義務がある場合は労働時間とみなされるという考え方が最高裁判例(大星ビル管理事件、平成14年2月28日判決)で示されており、会社ごとの就業規則・雇用契約書の記載を確認することが欠かせません。

Q. 24時間勤務は違法ではないのですか?

労働基準監督署から労働基準法41条3号の断続的労働の許可を受けている事業場であれば、休憩・仮眠を含む拘束24時間の勤務形態自体は合法です。逆に許可を得ずに同様の勤務をさせている場合は法令違反の疑いがあるため、求人票や面接で許可の有無を確認する視点が大切だと僕は考えています。

Q. 休憩・仮眠時間はどれくらい確保されますか?

一般的な24時間隔日勤務では、拘束24時間のうち仮眠・休憩を合わせて6〜8時間前後を確保する現場が多い、というのが僕の体感値です。ただし現場の警戒レベルや対応義務の有無によって差があるため、休憩取得実績の記録簿があるかどうかを確認することをおすすめします。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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